第63回表美展の受賞作品をご紹介致します。なお、今回のご案内より、受賞者のコメントもあわせて掲載致します。

経済産業省製造産業局長賞

経済産業省製造産業局長賞静好堂中島河村 律子「摂取不捨」

静好堂中島 河村 律子「摂取不捨」

この度の受賞に際しまして、皆様には深く感謝しております。また大変有り難く、厚く御礼申し上げます。
時代が求め必要とするものに沿いながら、内容、技能、技術、芸術を兼ね備えたものを作るのは、一生勉強であり、一人では成し得ない事だと思っています。こうしてみたらどうだろと常々ずっと考え躓いている私は、毎日が勉強であり、これまで指導し育て、支えて下さいました皆様のお蔭で今があると実感しております。
今後も、多くの人たちとの絆を大切にし、経験と失敗、反省を重ね、仕事に邁進していきたいと思います。

近畿経済産業局長賞

近畿経済産業局長賞福永日進堂福永 郁余「100年前の木版画美人画浮世絵」

福永日進堂 福永郁余「100年前の木版画美人画浮世絵」

この度は、第六十三回表美展において栄えある賞を頂き、心より御礼申し上げます。
本紙は約百年前の木版浮世絵。江戸時代から飼われていた愛玩犬チンを連れた美人画で今年の干支「戌年」にふさわしい本紙に出会うことができました。この可愛い浮世絵を引き立たせるための額装デザインは、女性の着物柄からヒントを得ました。額縁は赤溜漆塗。額装マット部表面は表装裂と鳥ノ子和紙。その裏側に用いた材料はフランスの厚紙や糊。フランスの材料は、本紙の保存を考慮して中性に近い原料で作られています。制作手法はフランス額装テクニックです。立体的なカーブ部分の下は空洞になっています。湿気の多い日本では、貼る素材の厚みが薄いと空洞部分にシワが入ることがあり、裂地の裏打ち厚みや和紙の厚みに神経を使います。
和の本紙と裂地・和紙・漆額がフランス額装テクニックと上手く調和してくれるだろうかと心配や怖さを感じつつも愉しく制作しました。 最後になりましたが、表美展の開催にご尽力くださいました皆様に深く感謝申し上げます。

京都府知事賞

京都府知事賞尚仙堂田中 浩「七福神」

尚仙堂 田中浩「七福神」

この度は、栄えある賞を頂きまして、誠にありがとうございます。
今年は、昭和初期に描かれた「絹本 七福神図」を仕立直して出品させて頂きました。
自分は、平素よりシンプルで飽きの来ない表具を第一目標にしています。裂地は、本紙とほぼ同じ時代のもので取り合せをし、本紙との調和と一体感を強く心がけました。
私見ながら、古い裂地には、傷や汚れなどの難点がありますが、染の透明感、自然な光沢、控え気味の優しい輝きなど、難点をはるかに超える魅力があると考えています。
最後になりましたが。この受賞を励みに一層の努力を重ねて参りたいと思いますので、今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

京都市長賞

京都市長賞光薫堂井上 利彦「想の遊」

光薫堂 井上利彦「想の遊」

この度は栄えある賞をいただきありがとうございます。お師匠さんをはじめご今まで指導いただいた皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。
今回は京都精華大学芸術学部日本画コースを卒業後、着物の図案家として活躍されている峯本智怜さんに描いていただき、3尺6曲屏風に仕立てました。
現在、日本画の大きな公募展はパネル形式の出展が中心で、掛軸や屏風などに描かれることが少なくなりました。日本画を志す若い作家さんに、表具という伝統的な表現方法に触れていただく機会を設けることも私たちの大切な役割だと思います。
黒みがかった茄子紺色のOSMO COLORで塗ったキハダの縁に、格子模様の裂地を小縁に張る。裏は楮紙を淡いグリーン系で染めグラテーションに張る。描かれた作品の和絵具の淡くカラフルな色調と童話をモチーフにしたメルヘンチックなテーマに合う「かわいい」屏風になるよう意匠と装飾に工夫を施しました。
今後も若い作家さんの斬新な感性と新しい創造に遅れを取らないよう、精進したいと思います。
ありがとうございました。

京都府中小企業団体中央会会長賞

京都府中小企業団体中央会会長賞静好堂中島萱野 はな「大黒天図」

静好堂中島 萱野はな「大黒天図」

今回、京都府中小企業団体中央会会長賞をいただきましたことを大変嬉しく思います。
受賞できたのも、自分だけの成果ではないということです。
これまで自分を指導し育てていただいた先輩の皆様のお蔭であると実感しています。
今後も、腕を磨き日々努力していきたいと思います。
最後になりましたが、このような素晴らしい賞を与えていただいた関係者の皆様に御礼申し上げます。

京都商工会議所会頭賞

京都商工会議所会頭賞弘誠堂田中 健太郎「清風」

弘誠堂 田中健太郎「清風」

この度、受賞出来ました事、大変うれしく思っております。日頃やってきた事が、こうして賞という形で評価して頂けて光栄に感じております。これからも頂いた賞に恥じぬ様、努力していきたいと思います。

京都府職業能力開発協会賞 / 京都市長賞(青年会)

静好堂中島 中島匠「思い出」(京都府職業能力開発協会賞)/「三年坂」(京都市長賞(青年会))

この度は、第63回表美展において、受賞させて頂きまして、ありがとうございます。
本展及び青年会の作品は、若い方にわかりやすく楽しい表具を知って頂く事をコンセプトに作りました。
これからも、楽しみながら素敵な作品を作れるように頑張っていきたいです。
今後ともよろしくお願いたします。

京都新聞賞

京都新聞賞静好堂中島中島 稔幸「大黒様玉絵」

静好堂中島 中島稔幸「大黒様玉絵」

この度は第63回表美展におきまして京都新聞社賞を頂き誠にありがとうございます。
昨年に続き受賞させて頂けたことは今後の仕事の励みとなりました!
その一方で表美展の規模は年々縮小していっている現実に1人の職人として寂しさと今後の課題の大きさを痛感致しました。
来年に向けて観に来て頂けるために出来ることから少しずつ進めて行きたいと思います。
この度はありがとうございました。

表美賞

表美賞中村表具店中村 和富「本間二曲雲砂子屏風」

中村表具店 中村和富「本間二曲雲砂子屏風」

第63回表美展にて表美賞を頂きまして有難うございます。
今回,思わぬ所より親和金の雲砂子紙をもらい受け、屏風に仕立て出品させていただきました。役員の皆様には、お世話になり感謝しております。今後ともよろしくお願いいたします。

明治150年記念賞

明治150年記念賞錦主庵添田 伊久男「竹林図自画賛」

錦主庵 添田伊久男「竹林図自画賛」

後期高齢者になる私に、最後にご褒美を戴いたみたいで感謝しております。ありがとうござます。

京都府知事賞(青年会)

京都府知事賞(青年会)衣川松栄堂衣川 充洋「除夜の鐘」

衣川松栄堂 衣川充洋「除夜の鐘」

この度はこのような賞をいただき、本当にありがとうございます。
今回は、青年会から版画の本紙を頂き、それを表装致しました。
版画特有のサインの関係で縁に白紙がある為、その処理に、版画の表装をした事が無かった私は大変苦労しました。
本紙の版画は除夜の鐘でした。
最初の印象、ふわふわと雪が降る情景を思い経ちました。
その為、江戸時代の雪結晶のデザインを取り入れて、ちまちまと作業をし続けました。努力の結晶かなぁと、大変嬉しく思ってます。
賞をいただきましたが、この賞を、汚さないよう、更にお客様に喜んで頂けるよう、きっちりとした丁寧な仕事を積み重ねていきたいと思っております。ありがとうございました。

京都府中小企業団体中央会会長賞(青年会)

京都府中小企業団体中央会会長賞(青年会)稲垣清昌堂稲垣 佳昌「八坂の塔」

稲垣清昌堂 稲垣佳昌「八坂の塔」

このたび第63回表美展におきまして、栄誉ある賞をいただきまことにありがとうございました。
今年の作品は児嶋俊見先生の版画で、その中から特に気に入った本紙が「八坂の塔」でした。マットには桐材を使用しましたが、少し厚みがあったので高さや隙間の調整を工夫しました。
最後に審査して頂きました皆様、表美展委員、理事の皆様方にお礼申し上げます。ありがとうございました。

京都商工会議所会頭賞(青年会)

京都商工会議所会頭賞(青年会)藤田雅装堂藤田拓生「山の祭り(ペルー)」

藤田雅装堂 藤田幸生「山の祭り(ペルー)」

この度は、このような栄誉ある賞を賜り誠にありがとうございます。
今回、余白の広く残した本紙「山の祭り(ペルー)」を受け取り構図をみて「空間・余白の広がり」をテーマに考えました。
まず、ペルーの大空のような広がりを見せる為、全体を左下に寄せ右と上の余白を敢えて広く残しました。
そして、本紙廻りは青・濃淡二色を使用し少年が見上げる大空(視界)とケーナの笛の音色の広がりを表現しています。
また、本紙廻りのスジにはペルーの民族衣装をイメージした裂地を少し広く使用し、軸先はケーナが対角線上に長く描かれているので長い目の笛のような形状を選択しました。
最後になりましたが、今回の受賞を励みにより一層の努力を積み重ねて行きたく思います。
皆さま、今後ともご指導の程よろしくお願い申し上げます。